馬、羊のスチールロケ記 -シリンホト(錫林浩特)編-3

連綿と続く砂漠化した大地を見ていると、憂鬱な気分がいっそう強くなってきて、馬や羊の写真のことなど頭からなくなってしまうようでした。
何時間走ったかわからないまま、夕方近くに観光化されたモンゴルパオのある台地に連れて行かれました。 そこは草は茂っているのですが、台地なので草原の広がりを感じません。 だいいち馬が数頭いるだけではこちらが撮りたい画にならないので、何故ここに車を停めたのか?ただの休憩ですか?とドライバーに詰め寄ると、「今日はもう遅いからここに泊まりましょう。ほら、草丈がフホホトとは違うでしょう。」としたり顔です。「草丈も必要だけど馬と羊はもっと必要なの!」と怒って言うと、「まーまー、そういきり立たないで。明日シリンホトへ行きますからね。 あ、あなたとカメラマンさんのパオはこちらの2つです。」と言い捨て、自分は彼女と仲良く別のパオに消えてしまいました。
それまでのやりとりから、このドライバーはここの経営者とも顔見知りのようでした。私は内心「やられた!これじゃあ、あのカップルのためのただのドライブじゃないか。シリンホトは大丈夫なのか…」と不安ばかり募り、もし、シリンホトが聞いたような緑濃い草原でなければ、このドライバーにどうやって落とし前つけさせようか、ああ、そんなことよりどうやってこの仕事をまっとうさせればいいのだろうと、悶々と眠れぬ夜を過ごしました。
よく朝、始終仏頂面でいる私を上目遣いで見ながら、ドライバーが「あっちの方の草もいいですよ」などと全然広がりのない原っぱを指して言います。 「ここはもういいですから、早くシリンホトへ向かいましょう。」と語気を強めて言い放ち、車に乗り込みました。
「シリンホトはここからそう遠くないです。」とドライバー。 「だったらシリンホトに泊まればいいのに。」と内心で吐き捨てながら、だまってわざと険悪なムードを作り出しておりました。

また来た時と同じようなまっすぐに伸びた道路に出て、しばらく走ると街が見えてきました。 「あれがシリンホトの街です。」と言われて左右を見ても草原はありません。 街は遠目からみると小さくはなさそうで、思わず「草原はどこに?」とこれまでも何度もしている質問をしました。 ドライバーは、私がシリンホトの草原について同じ質問ばかりするのにウンザリした様子で、「あの街をつっきると、突然、嘘みたいに草原が始まるんです。 本当に大丈夫ですから!!」と苦笑いと怒りとを交えて答えます。
街に入ってから、先に街のホテルに宿を予約してから草原に行きますか、などと相変わらず呑気なことを言うドライバーに、「まずは草原です!」と号令し、車はそのまま街の中を走り続けます。と、まだ街の続きと思われたその先に、道路の両側にドーンと草原が、緑豊かな草原が、画に撮りたいと望んでやまなかった理想の草原が現れました!

本当にあった~! よかった~!! 泣き出しそうになる私でした。 ドライバーさん、疑ってごめんなさい。
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d0wnline | 2007.07.15 21:57