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九寨溝・黄龍ロケ記ーその2

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 私もディレクターもけっこういける口ですが、さすがにアルコール度数の高い白酒(中国では「バイチウ」と言います)はちょっと苦手。二人でビールを頼んで地元料理を食べ、その晩は何事もなく休みました。
 次の日、朝早くから九寨溝内の下見。
 多くの観光客に混じって初めての九寨溝にドキドキしながら環境バス(九寨溝溝内は指定の環境にやさしいバスに乗らなければいけません)に乗り込みました。
 バスがどんどん上へと山を登って行くに連れて、両側には見たこともない美しい水の景色が現れ、「へえーすごい!」と見とれているうちに、道が二股に分かれる中間地点の諾日朗瀑布に着きました。 そこから向かって左の「長海」行きと「五花海」などへ向かうバスに乗りなおすのです。

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 我々はまず向かって右の「五花海」行きを選択しました。九寨溝はこの「五花海」がとても美しいと聞いていたからです。
 バスで頂上まで行って、歩いて下りるのですが、美しい景色にディレクターのカメラのシャッターを押す手にも力が入ります。彼はこのロケハンにけっこう本格的なカメラと機材を持ってきていて、プロのカメラマンばりに写真を取りまくっていました。我々はこの日一日、自慢の健脚を存分に発揮してほとんど休みもとらずに九寨溝内を歩き回り、閉園時間ギリギリまでロケハンをしておりました。
次の日も同じ九寨溝内をまったく同じように歩き回り、リサーチとしては十分な仕事にすっかり満足。ただ、やはり落とし穴は待ってました。
そうです、高山では重いものを持って激しい運動をするのは地上にいる時より遥かに体力を消耗し、高山病にもなりやすいと本に書いてあったことなどすっかり忘れていました。それに高山ではアルコールも控えた方がいいということも・・・。
 一日の仕事を終えた楽しみはやはり食事の際の一杯でしょう。2日間の九寨溝リサーチを終えて二人とも上機嫌でビールを何本か空けました。レストランとホテルは200mも離れていません。ところが、お勘定をして二人で店を出たところ、1m歩くのにもゼイゼイ息があがります。あれ?おかしい?と思って、ゆっくりゆっくり歩きながら「すみません、なんだか歩くのがとても苦しいです。」とディレクターに言うと「いや、俺もやねん。なんやこれ?苦しすぎる。」と彼も顔をゆがめてます。二人でまったくの牛歩状態でなんとかホテルにたどり着き、ディレクターに「苦しければ昼間買っておいた酸素ボンベを使ってくださいね」とひと声かけて部屋に入りました。
昼間買った酸素は1本。私は万が一苦しくなったら部屋のを使おうと、ベッドに横になりウトウト。明日は九寨溝より高度が高い黄龍に登る予定で、途中4700mという最高地点を車で通過して黄龍に向かうので、大丈夫かなと内心不安ではありました。 
夜中、あまりに息が苦しくて目が覚め、やっぱり部屋の酸素ボンベを開けようと思い、初めてシューシューッと吸ってみました。でも、うまく吸えてるのかイマイチよくわからず、なんどかやってみましたが、なんだか前より苦しくなったような気もして止めました。胸が痛いような苦しいような気持ちでしばらく居ましたがまもなく疲れてまた寝付いてしまったようでした。

 翌朝、ディレクターに「昨日はちょっと苦しかったです。やっぱり高山をなめてはいけませんね。」と声をかけると、振り向いたディレクターの顔は真っ赤。「え?!」とビックリして「どうしました?」と聞くと、「あかん、高山病みたいや。幻覚みてもうた。」とディレクター。なんでも幻覚で七人の小人を見たとか。おでこに手を当てると熱い。「やばい!」高山病は高度を下げるしか治す方法はないし・・・と困っていると、ディレクターは絶対に黄龍に行くと意地をはります。
こうして黄龍に向けて出発。最高地点の4700mでも高熱の体をおして車から降り、写真を撮っているディレクター魂には敬服するしかありません。
ほどなく、黄龍の入り口まで到着しましたが、その頃にはディレクターの顔は更に真っ赤かになってしまって苦しそうに横になっています。
「私が一人でロケハンしてきますからここで待っていてください。」と申し出たところ、うつろな目で「おれ、たぶんあかん。君まで高山病になったらたいへんや。すまんけど黄龍の地図だけこうてきてくれ。このまま成都に戻ろう。」と言います。私は大丈夫ですからロケハンさせてください、と何度も押し問答の末、苦しそうなディレクターを早く高度の低い所へ運ぶことを優先することにして成都へと予定を変更しました。
 成都に着いて1日休んだディレクターは回復も早く、翌日には微熱になっていつもの元気な姿に。無事、日本へ帰国できました。
 こうして、苦しい目にあった我々は、本番ロケではお酒も控え、スタッフや出演者に「九寨溝ではゆっくり歩きましょう!重い荷物は極力持たないで!」「お酒は成都に帰ってからにしましょう!」などと偉そうに訓示をたれていたことは言うまでもありません。
 


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